映画『邪魚隊(じゃっこたい)』のあらすじ・感想・考察を軽微なネタバレありでご紹介します。
ネタバレありの部分・ネタバレなしの概要紹介を分けているため、お好みに応じて読み進めてください。
舞台挨拶や副音声上映の内容紹介・筆者がおすすめしたい見どころなども個別に記述するため、目次を参考に自衛しながらご参照いただけますと幸いです。
<こんな人におすすめ>
・続編の2.5次元舞台鑑賞に向け、映画の内容や登場人物・ストーリー展開を確認しておきたい
・邪魚隊映画版の内容・あらすじをある程度のネタバレ込みで把握したい
・ストーリーや登場人物の裏話や細かな設定を知りたい
・とりあえず映画レビューを読みたい
<参考資料>
・映画『邪魚隊』本編映像
・公式パンフレット
・舞台挨拶(2024年6月9日 T・ジョイ梅田にて14時より実施の回)
・公式コメンタリー上映
※当記事で紹介する内容は、筆者の主観による感想・考察が大部分です。公式とは異なる個人的な見解としてご参照ください。
※当記事ではアフィリエイト広告を掲載しています。
表示される商品やサービス等は随時変動するため、映画の内容や出演キャスト様・製作会社様とは関係のない情報が表示される場合があります。
映画邪魚隊は舞台編へ続く!あらすじを予習して観劇をもっと楽しもう
映画『邪魚隊』は東映株式会社配給の映像作品。
映画・舞台という複数の媒体で物語が展開する東映ムビ×ステシリーズの第5タイトル目であり、同シリーズには『死神遣いの事件帖』や『漆黒天』などがあります。
邪魚隊シリーズは、映画公開日が2024年5月31日、続編舞台初日が同年8月9月というスケジュールがあらかじめ告知されており、映画版邪魚隊は舞台編に向けての第1章のような位置づけです。
邪魚隊映画版の概要・基本情報まとめ(ネタバレなし)
邪魚隊は舞台化を前提にした作品であるため、映画版キャストも舞台俳優が中心です。
殺陣アクション満載の時代劇要素に加え、映画本編の劇中でも歌とダンスが披露されるのが特徴。
『ミュージカル時代劇』というコンセプトが掲げられており、歴代ムビ×ステシリーズの中でも特に舞台要素・ミュージカル要素が強い個性的な作品です。
邪魚隊の映画のあらすじと世界観(ネタバレなし)
邪魚隊の物語の舞台は、8代将軍徳川吉宗が治める江戸。(劇中では明言されていないものの、吉宗の在職中ということあれば、厳密な年代は1716年~1745年の間)
人喰い鬼の噂に怯える人々の間で"お札一つで鬼払い"を謳う怪しげな宗教『お太鼓教』の信者が急激に拡大しているという、架空の世界観です。
そんな江戸に、生き別れた姉を探して辿り着いた若く清廉な武士・水野平馬は『邪魚隊』と名乗る不思議な青年たちと出会います。
彼らは死罪の刑を免れる代わりに幕府の密命を受け、闇の仕事をこなす“盗人集団”でした。
邪魚隊の登場人物概要とキャスト一覧(ネタバレなし)
邪魚隊のキャストは、2.5次元舞台などをメインに大活躍中の俳優さんが多くを占め、剣術アクションや日本モノの所作を極めた実力派揃い。
俳優推しの方、時代劇ファン、アクションファンなど、幅広い層の鑑賞者が楽しめる豪華なキャスティングとなっています。
所属・登場人物名 | 人物概要 | キャスト(敬称略) |
---|---|---|
邪魚隊 | ||
鱗蔵(りんぞう) | 邪魚隊のリーダー | 佐藤流司 |
スルメ | 邪魚隊のメンバー | 橋本祥平 |
鮒右衛門(ふなえもん) | 邪魚隊のメンバー | 小柳 心 |
比売知(ひめじ) | 邪魚隊のメンバー | 廣瀬智紀 |
邪魚隊にかかわる人々 | ||
水野平馬(みずの へいま) | 姉を探す田舎出身の武士 | 阿久津仁愛 |
徳川吉宗(とくがわ よしむね) | 江戸幕府の第8代将軍 | 永井大 |
景虎(かげとら) | 邪虎隊のリーダー | 姜 暢雄 |
蓼丸玄庵(たでまる げんあん) | 幕府のお抱え医師 | 輝馬 |
敵陣営 | ||
安食満親(あじき みつちか) | お太鼓教の教祖 | 石井一彰 |
多々良(たたら) | お太鼓教の用心棒 | 玉城裕規 |
刈谷(かりや) | お太鼓教の幹部 | 吉岡睦雄 |
音御前(おとごぜん) | お太鼓教の歌姫 | 高田夏帆 |
映画邪魚隊あらすじ・ネタバレ考察|概要と結末、続編への伏線まとめ
ここからは、邪魚隊映画本編のあらすじ紹介と筆者の感想・考察です。筆者がおすすめしたいポイント、考察を深めたいポイントに基づき映画本編を7パートに分けました。
各パートの簡易なあらすじを紹介したうえで感想や考察を述べる形となり、全体的にネタバレを含みます。
具体的すぎるネタバレは避けるものの、結末の概要や登場人物の過去など、続編舞台のための前知識として把握しておきたい部分は軽微なネタバレ込みで解説します。
ネタバレを見たくない場合は、ここで読了とすることをおすすめします。
↓以下、映画版邪魚隊の結末・ネタバレ込みのあらすじ紹介です↓
鬼の謎を追え!曲者揃いの邪魚隊と純真な武士の端くれ、運命の出会い
お太鼓教の歌姫を自身の姉と確信し追いすがった平馬は、窮地に陥ったところを奇抜な容貌の青年に助けられます。
不思議な青年に隠れ家のような長屋へと誘われた平馬。感謝するのも束の間、青年の仲間達が野次馬(と平馬)から盗んだ財布を楽しげに披露する光景を目にし驚愕。
彼らは死罪を言い渡された“脛に傷を持つ輩”であると同時に、その刑を免れること条件に江戸で密かに悪事を成敗する『邪魚隊』…平馬を助けた青年は、そのリーダー鱗蔵でした。
<ここに注目!>
生真面目な青年とアウトロー集団の出会い…冒頭からワクワクする展開です。
邪魚隊のメンバーのユニークな登場シーン、そして何より鱗蔵が釣竿と体術・ちょこっと剣術を披露するスタイリッシュな釣竿殺陣アクションは大迫力。
冒頭からクライマックス並みの見せ場でお腹いっぱい!アクション映画ファンにもぜひ見てほしい名シーンがいきなり来たなという感じでした。
邪魚隊と平馬の任務がスタート!策謀家な上司と怪しい教祖にご用心
お太鼓教と鬼の秘密を探るため、平馬は一時的に邪魚隊に協力し危険な任務に臨みます。
そんな邪魚隊と平馬は、お太鼓教の教祖である安食こそが倒すべき敵であることを知り、何やら怪しい動きがあることが発覚。
そして安食とその腹心・多々良は圧倒的な強さで邪魚隊一同を返り討ちにし、見せしめのように平馬の姉の命を目の前で奪ってしまいます。
<ここに注目!>
ハラハラドキドキ、ちょっとコミカルな潜入捜査からの衝撃展開と突然すぎる悲劇。
邪魚隊映画本編は84分と短めで全体的に展開が速すぎる感はやや目立ちます。
しかし、探り合いや悲しいパートを引きずりすぎないテンポの良さ、残酷なシーンを美しい描写で違和感なく進行させるスピード感はむしろ好印象でした。重い展開もほど良いバランス感で気負わず観られるため、気軽にいろんな人におすすめできます。
鱗蔵と平馬、相通じ合う境遇にありながら真逆の道を選ぶ悲しさ
命からがら逃げ延びた一同。しかし、姉の敵討ちにと燃え立つ平馬・過去のトラウマが蘇り安食を恐れる鱗蔵は決別…平馬は邪魚隊の元を去ってしまいます。
意気消沈し心が荒む鱗蔵ですが、邪魚隊の仲間に叱咤激励され、危険な戦いに赴いた平馬の救出・そして鬼の討伐を決行すると奮起。
一方で平馬は、鬼の討伐に向かう『邪虎隊』への入隊を志願し、覚悟の証として“ある犠牲”を払いながらも安食との再戦に向かいます。
<ここに注目!>
筆者がグッときたのは、鱗蔵と平馬の間に生じた大きな変化。
強引に協力を迫った鱗蔵、しかたなく助っ人を引き受けた平馬という二人の関係性が、鬼討伐に前のめりな平馬と守りの姿勢で引き留める鱗蔵という形に逆転します。
二人の変化の根底にあるのは、どちらも同じで"家族を失った悲しみ"です。
鬼のせいで弟を失ったが故に平馬を同じ目に遭わせたくない鱗蔵、鬼のせいで姉を失ったが故に仇討ちに猛進する平馬の対比が印象的でした。
考察|鱗蔵と平馬の心境が真逆に激変したのはなぜ?
同じ悲しみを持つ似たもの同士なのに、鱗蔵と平馬はなぜ真逆の行動を選んだのか?
危険な環境に慣れている鱗蔵が恐れ慄き、温厚な田舎武士の平馬が戦いを望むというギャップがなぜ生まれたのか?
その答えは、鱗蔵が平馬を亡き弟に重ねていたという点にあるのかもしれません。
鱗蔵には『弟のように思ってしまう平馬』という守りたいものができた一方で、早くに親を亡くし唯一の肉親だった姉も失い、その面影を重ねる相手もいない平馬。
ひょっとすると平馬は、『失うものはもう何もない』くらいにまで精神的に追い詰められたが故に、自身の命も顧みず無謀な仇討ちへと己を駆り立ててしまったのかもしれません。
同じ悲しみを知るはずの、鏡合わせのような鱗蔵と平馬。そんな二人が真逆の道を選んだ理由を考察すると、一段と悲しみが際立ちます。
安食の秘密を知る意外な人物が歌って踊る!?邪魚隊もいざ出陣!
過去の自分自身を救い、己にけじめをつけるために安食を倒す…そう決意し再起した鱗蔵ですが、あまりにも強大で謎の多い相手にどう戦うか苦悩するばかり。
そんな中、鮒右衛門の手引きで邪魚隊はある人物と面会し、安食の意外な正体を知ることになります。
安食は徳川家に縁があり、将軍吉宗は一連の経緯を「徳川家の恥」であると認識している模様。自身の代で決着をつけるべく、邪魚隊を決戦へと促します。
<ここに注目!>
鬼の正体、安食の秘密、討伐のヒントと説明盛りだくさんのパートですが、軽妙な歌と踊りでテンポよく進めてくれるので息苦しさは無し。
見どころはなんといっても、とんでもない大物人物がコミカルに歌い踊り、そんな姿にちょっとポカンとする邪魚隊の姿。
メタ表現に近い形で観客の動揺を邪魚隊が代弁してくれるので、突飛な展開ながらもクスッと笑って受け入れられます。
これぞミュージカル時代劇!という個性的な絵面なので、ある意味映画邪魚隊の世界観を端的にあらわす名シーン(迷シーン)かも。
吹っ切れた鱗蔵は気合い満点!決意と奇策を携え決戦の場へ
捨て駒部隊として道具のように扱われるのではなく、自らの意思で戦うことを宣言した鱗蔵。安食を倒す糸口を掴み、臆せず決戦に向かいます。
一方その頃、平馬と邪虎隊は安食と多々良に苦戦し大ピンチに…!
イチオシ名シーン!一筋縄ではいかない鱗蔵ならではの名台詞は必見
このパートで、筆者イチオシの名言が登場します。
邪魚隊の力量を見込み活躍を期待する言葉として「バカとハサミは使いよう」という慣用句を持ち出され、奮起を促される鱗蔵。
しかし、捨て駒扱いへの反抗心を忘れない鱗蔵は素直には従いません。
「俺たちはハサミじゃありません、ただのバカなんです。だから自分でケリつけてきます!」
兼崎涼介監督 『邪魚隊』(東映ビデオ 2024年)映画本編より
豪快な啖呵に、邪魚隊の仲間が迷わずついていく…劇中を通して、筆者はこのシーンが一番印象に残りました。
重くなりすぎず、どこかコミカルでありながらも心が熱くなる名台詞。ちょっと気恥ずかしい熱血なセリフですが、違和感なく自然体で演じ切った役者さんの名演技も流石の一言に尽きます。
邪虎隊全滅で絶体絶命…平馬のピンチに邪魚隊が駆けつける!
圧倒的な強さを誇る安食と多々良を前に、討伐の実働部隊である『邪虎隊』は全滅し平馬も打ち取られる寸前…そんな間一髪の窮地に、邪魚隊が到着。
激闘の末、鱗蔵と平馬はボロボロになりながらも安食との決戦に臨みます。
<ここに注目!>
一度は喧嘩別れした仲間のピンチに駆けつける、胸熱ど真ん中の展開と思いきや容赦ゼロの戦闘で邪魚隊も半壊。観客の情緒も深刻なダメージを受ける、劇中最後の大人数での乱闘シーンです。
激闘の中でも頑なに鱗蔵からの援助を拒む平馬、あくまで己のために戦うのだと宣言する鱗蔵。捨て身の作戦で敵を足止めする仲間達。
あえて誰も善悪を語らず戦い続けるその姿は、王道のヒーロー物語というより、己が何を求めて生きるのかという精神論の色合いが強い印象でした。
馴れ合いだけではなく、ただの人助けでもなく、自分自身のために。
手段を選ばない作戦で命を投げ打つ覚悟もある。
『悪党には悪党を。』というキャッチフレーズにふさわしいダークヒーローならではのほんのりビターな展開と、ピンチに仲間が駆けつける少年漫画的な胸熱展開の匙加減が絶妙です。
斬って歌って鬼退治!死闘の果てに鱗蔵と平馬が見出したものとは
難攻不落に見える安食。その弱点を推理し奇策を用意した鱗蔵の読みは果たして的中するのか…?
気になる決着はぜひ映画邪魚隊をご覧ください。
<ここに注目!>
鱗蔵の作戦や安食の攻略法もさることながら、筆者がイチオシしたい見どころは鱗蔵が平馬に刀を託すシーン。
鱗蔵は、弟の仇・そして己の宿敵である安食を討ち果たす最後の役目を、あえて平馬に譲ります。
己にケジメをつけると宣言しながら平馬に最後の一太刀を譲ったのは、やはり平馬に肉親のような情を向ける鱗蔵の人柄によるところがあるのでは。
あくまで自分のために戦うのだと宣言した鱗蔵ですが、もし「自分一人で安食を討ち取れるけど、それでは平馬の心は晴れないのでは?」と考え、やはり平馬への情に突き動かされていた部分もあったのだとしたら…エモい…(ものすごい主観)。
弟を救えなかったという過去に苦しみ、一度は心が挫けかけた鱗蔵。
だからこそ、平馬が「姉のために何もできなかった」と自分と同じように心を病むことを案じたのだとすれば、あえて平馬に見せ場を作ってあげた意味も一段と深みが増します。
考察|映画邪魚隊は鱗蔵がアイデンティティを取り戻す物語なのかも?
ラストの決着シーンで筆者が印象に残った点はもう一つ、鱗蔵が安食の弱点に攻め込むシーンです。
名乗り口上とともに鱗蔵の得意技であるスリさながらの手腕が発揮されますが、ここで鱗蔵は初めて“巾着釣りの”という二つ名を歌唱ではなくセリフとして発言します。
「俺は…巾着釣りの鱗蔵だ!」
兼崎涼介監督 『邪魚隊』(東映ビデオ 2024年)映画本編より
巾着釣りの鱗蔵というアウトローな二つ名は、釣竿を巧みに操ること・スリによって金品(時代背景的に巾着=財布に近いニュアンス)をくすねることに由来するものと思われます。
少なくとも幼少期には無かったもののはず、つまり“今の鱗蔵”を表す言葉なのかもしれません。
これが邪魚隊として生きる今の鱗蔵のアイデンティティを表す言葉なのだとすれば、この名乗り口上も特別な響きを持つように聞こえます。
この名乗りには、こんな意味が込められているのではないでしょうか。
「俺は鬼に怯える昔の俺じゃねぇ、『邪魚隊の鱗蔵』だ!」
自らの力で過去を乗り越え、今を生きる自分の強さを取り戻した…そんな誇りを見出し、安食の力を“スリ”で封じた鱗蔵。
まさしく自分自身にケジメをつけ、過去を乗り越え”今を生きる自分”を勝ち取った瞬間だったのかもしれません。
映画版邪魚隊の結末から続編舞台にどう繋がる?不穏な気配に注目
そもそも邪魚隊は、死罪の刑免除の代わりに闇の仕事を請け負うアウトロー集団。
監視のような機能を持つ毒入りの腕守りにほんの数日先の寿命を握られ、儚い命を燃やしているという背景があります。
宿敵を討ち取り大手柄を挙げて帰還した邪魚隊ですが、彼らの自由と命を脅かす毒入りの腕守りが外されたという描写は無し。
続編でもおそらくこの設定は継続し、独特な死生観のもとで戦う姿が描かれていくものと思われます。
邪魚隊に新たな仲間が加入!?実は平馬はメンタル最強かも
闇の仕事を請け負い、その報酬のような形で与えられる解毒剤。一定時間ごとに解毒剤を摂取しなければ絶命してしまう…そんな捨て駒集団としての邪魚隊を象徴するのが、毒を打ち込む仕掛けが施された腕守りです。
その危険な腕守りを、何の罪も犯していないのに自ら進んで装着した青年が1人。そうです、水野平馬です。
平馬は邪虎隊への入隊を志願した際の”覚悟の証”として自ら毒入りの腕守りを装着、命を捧げる心意気を示していたのでした。
「これで私も邪魚隊の一員だ!」
兼崎涼介監督 『邪魚隊』(東映ビデオ 2024年)映画本編より
危険な腕守りを装着した腕を得意げに掲げて見せ、晴れやかに笑う平馬に鱗蔵は唖然。
そんな危険なものは腕もろとも切り落としてやると息巻いて平馬を追いかけ回しますが、その様子はもはや兄弟のじゃれあいのような微笑ましさです。
鱗蔵は平馬に対し「バカはお断りだ!」と入隊を拒否しますが、前段で自分自身のことを「バカなんです」と言い切っており、意図せず伏線回収のような洒落感があるのも面白いポイント。
鱗蔵も平馬も、誇りのために命を賭ける“バカ”同士。
水野平馬という新たな仲間を迎えた邪魚隊が舞台編でどんな活躍を見せてくれるのか、ますます期待が高まります。
映画邪魚隊の結末はハッピーエンドではなさそう?鬼の動きに注目
一方で安食の根城では、討ち取られた安食の亡骸の元に、消息不明となっていた多々良が涼しい顔で帰還。絶命したはずの安食の肉体にも何やら怪しい変化が…!
安食陣営も舞台編への登場が告知されているため、どんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。
ネタバレ込みでの邪魚隊の登場人物をおさらい
ここからは、映画邪魚隊本編の内容を踏まえ、登場人物の詳細を筆者の感想と考察・キャラクターごとのおすすめシーンを中心に解説します。
パンフレットや舞台挨拶、コメンタリー上映で語られた裏話の内容、劇中の見どころも紹介するため、邪魚隊の魅力をより深く追求したい方におすすめです。
全体的に映画邪魚隊本編の軽微なネタバレを含むためご注意ください。
邪魚隊とは?魚・虎・狐という3つのジャッコ隊があります
邪魚隊は、死罪の刑の免除と引き換えに闇の仕事を引き受ける幕府お抱えの特殊部隊。
悪事を成敗するものの、邪魚隊自身も何らかの前科があると思われるため、悪党VS悪党のダークヒーロー戦隊というイメージがしっくりきます。
映画内で「ジャッコタイ」と呼称された組織は、邪魚隊・邪虎隊・邪狐隊の3隊。
魚隊は盗み、虎隊は戦闘、狐隊は情報収集といった具合に役割分担があると同時に、劇中では虎隊の方が魚隊よりも上位組織であるかのような構図が示されていました。
邪魚隊の面々はそれぞれなぜ死罪を言い渡されたのか、リーダー鱗蔵がなぜこれほどまでに慕われていたのかなど、映画内では言及されなかった内容も多数。
舞台編ではスルメの過去や邪魚隊メンバーそれぞれのエピソードが掘り下げられるとの告知があり、物語の更なる深まりに期待が高まるところです。
舞台挨拶で明かされた裏話(2024年6月9日大阪舞台挨拶にて)
邪魚隊、そして敵陣営の安食と多々良の名前には、それぞれ魚にちなんだ文字や音が含まれています。
しかし、この魚コンセプトは当初からあったわけではなく、初期案での鱗蔵の名前は魚要素のない『ランゾウ』だったとのこと。
また、邪魚隊のキーアイテムである毒入りの腕守りは、隊名にちなんで魚モチーフのアクセサリーを手配する予定であったものの撮影当日に準備が間に合わず、結局シンプルなデザインのものになったそうです。
鱗蔵
邪魚隊の頼もしいリーダーであると同時に、葛藤や弱さを抱えた人間味溢れる人物。
幼い頃、飢饉が続いた際に弟と共に鬼の食糧として売られてしまったという来歴があり、目の前で弟を失うという悲しい過去を秘めていました。
邪魚隊の仲間からは信頼されており、スリの手腕・喧嘩の強さ・作戦を組み立てる知能面も揃っている様子が劇中で描かれています。
圧巻のアクション!釣竿に刀、格闘技と見どころいっぱいで魅力満点
鱗蔵を演じる佐藤さんは2.5次元舞台で大活躍中。圧倒的な身体能力・自然体な演技で鱗蔵という不思議なキャラクターを見事に演じきっています。
見どころはなんといっても冒頭の乱闘シーン。
釣竿・仕込み刀・肉弾戦をミックスさせたユニークなアクションシーンは長回しのワンカットで撮影されています。
パンフレットではリハーサルが1回のみだったと紹介されており、役者さんのハイレベルぶりが際立つ必見シーンの一つです。
筆者のおすすめ見どころシーン|意外な場面のアドリブ
筆者が個人的におすすめしたい鱗蔵の見どころシーンは、序盤で邪魚隊への協力を拒み逃げ出そうとする平馬を無言で引き留めるシーン。
鱗蔵はざる蕎麦を食べながら悠々と平馬を先回りし、箸を無言で突きつけて進路を塞ぎます。
この所作は撮影開始時点で詳細が決まっておらず、佐藤さんがアドリブでさらっと対応したことが明かされました。(コメンタリー上映内で言及があったと記憶していますが、もしかしたら舞台挨拶だったかもしれません…!)
軽妙かつ少々お行儀の悪い所作はヤンチャな鱗蔵の雰囲気にぴったり。
佐藤さんの役への理解度や役者としての対応力の高さが披露された、邪魚隊の隠れた名シーンです。
水野平馬
序盤は清廉潔白で邪魚隊のアウトローぶりにタジタジだった平馬ですが、姉を亡くしてスイッチが入った後の猛進ぶりは鱗蔵をも退かせるほど。
戦闘能力もそれほど高くはなく控えめな物腰だった平馬が、誰よりも臆することなく決戦の地に突き進んでいく姿はとても印象的でした。
自らの命を脅かす毒を身につけ、当初は難色を示していた邪魚隊の一員になったと宣言したラストシーンでの弾けるような笑顔は、観た人の度肝を抜くのでは(笑)。
優しく愛情深い人が悲しみのどん底に突き落とされるとこうなるのか…と、もはや狂気を感じるほどの情感豊かな人物です。
しかし、その根底にある姉への想いを想像すると、平馬が忘我の勢いで敵討ちを望むことにも自然と納得できます。
平馬という人物の内面にしっかりと奥行きを与えてくれた姉・イトを演じる高田さんの温かさあふれるお芝居も、併せて注目したいおすすめポイントです。
筆者のおすすめ見どころシーン|NG寸前!笑ってはいけないあの場面
邪魚隊が序盤で平馬に求めた“協力”の内容は、お太鼓教の幹部である刈谷を誘惑し情報を聞き出すこと。
刈谷が惚れ込んでいる歌舞伎役者に扮した平馬が、渋々ながらも渾身の演技で迫るシーンでは、メロメロになった刈谷役の吉岡さんの怪演に笑いを堪えきれない様子が伝わってきます。
コメンタリー上映では「どうしても我慢できなくてちょっと笑ってしまった」と明かされており、これを踏まえた上で本編映像をよく見ると面白さ倍増。
当該場面で平馬の口元や目元がプルプル震えている様子は、ぜひ観ていただきたい迷シーンの一つです。
スルメ
顔をも覆い隠す白い装束に個性的な口調、多彩な武器を操り戦闘能力も高いという作中屈指のミステリアスで印象的な人物です。
同じ邪魚隊のメンバーである鮒右衛門と比売知は鱗蔵に対して荒っぽい口調や態度を見せることがある一方、スルメは一貫して鱗蔵を「お頭」と呼び敬語を崩しません。
また、平素のスリ活動を行う際には“盗んだ金品をアジトに持ち帰る”という役を担当。
スリの実行役である鱗蔵に次いで危険度の高い役割を担当していることからも、能力の高さや仲間内での信頼度の高さが目立つように見受けられます。
筆者のおすすめ見どころシーン|台詞から溢れ出る鱗蔵への強い忠誠
映画邪魚隊の本編では、1人で悩みを抱え込む鱗蔵に、スルメがサラッとすごいことを言います。
「嫌だと言われても地獄までついていきますよ」
兼崎涼介監督 『邪魚隊』(東映ビデオ 2024年)映画本編より
鱗蔵への想いが非常に強いことを感じさせられ、何やら重い過去を匂わせる意味深な名シーン。
舞台編ではスルメの過去が掘り下げられるため、なぜこれほどまでに鱗蔵を慕うのかが描かれるのかもしれません。
鮒右衛門
スキンヘッドに素手での豪快な戦闘、コワモテで威圧感のあるヴィジュアルですが根は温厚な雰囲気。高いところ、コワいもの、虫が苦手という可愛らしい面も描かれている上に、邪魚隊に入る前は町医者だったという来歴から、優しく親しみやすい人物像が浮かび上がります。
鮒右衛門は鱗蔵のことを基本的に「お頭」と呼ぶものの、有事の際には拳で語り強い口調で諭すことも。
人物像や来歴にそれほどアウトローな気配が無く、邪魚隊の中で入隊の経緯が一番謎めく鮒右衛門。
鱗蔵に対しては対等以上に物申せる立場にありながらも、自らの意思で部下ポジションを受け入れたかのような印象が残り、過去が非常に気になる人物です。
筆者のおすすめ見どころシーン|テーマ曲中での笑顔の理由とは?
邪魚隊にはテーマソングがあり、曲中にメンバーそれぞれの紹介パートを含みます。
鮒右衛門のパートでは、歌と共に薬の調合シーンが描かれていますが、注目シーンはその終盤。
薬草をカメラに向かって景気良く放り投げた鮒右衛門が笑顔を見せてくれますが、この笑顔にまつわる裏話がパンフレットで明かされています。
カメラに薬草をぶつけてほしいというオーダーに、上手くできるだろうかと緊張しながら臨んだという鮒右衛門役の小柳心さん。
狙い通りカメラに薬草を当てることができたことへの喜びから、思わず明るい表情になったとのこと…これから配信などを見る方は、ぜひこれを踏まえて鮒右衛門の表情にご注目ください。
比売知
比売知は中性的な美貌の人物であり、劇中歌でも『美丈夫』と明言されるほど。歌詞の内容によると、どうやら女装もこなせるほどの美貌と変装技術があるようです。
スルメと鮒右衛門は鱗蔵に対し一歩引いて部下として振る舞っているのに対し、比売知は「お頭」ではなく「鱗蔵」と呼ぶシーンが多め。お姉さん風の独特な言葉遣いと相まって、頼りになる姉御肌という言葉がしっくりくる人物です。
ラストシーンでは騒がしく走り回る鱗蔵を容赦なく叱り飛ばしており、邪魚隊の中でやや特殊な立ち位置にいるかのような印象でした。
筆者のおすすめ見どころシーン|男らしくワイルドな一面にも注目
女性のように柔和な雰囲気の比売知ですが、終盤の戦闘シーンでは武器と拳で戦うワイルドな姿を見せてくれます。
武器は鎌とトンファーが合わさったような形状。
女性的な所作が映えるオリジナル武器を考案したことがパンフレットで明かされており、スタイリッシュな形状が印象的です…が、それより強烈に印象に残るのは、比売知がガッツリ拳で敵に殴りかかる姿。
比売知を演じた廣瀬さんは、性別を超越すること、見た目とはギャップのある猛々しさも見せることなどを意識していたとパンフレット内で明かしています。
妖艶なお姉さんキャラからワイルドなアニキへ、スイッチが入った比売知のギャップは必見です。
番外編|ちょい役の蓼丸玄庵は舞台編で活躍しそう!
鬼を倒す毒を開発した蓼丸玄庵は、映画本編での登場シーンは少ないものの舞台編で活躍することがコメンタリー上映で明かされました。
観客の心に残るようにしておきたかったというコメントもあったため、個性的な丸メガネはそのためのキャラ作りだったのかも?
映画邪魚隊本編で蓼丸が登場するシーンは短いものの、美しいビジュアルとなんとも言えないキャラ立ちは確かに印象でした。
コメンタリー上映では、蓼丸の登場シーンで吹き出すような笑いが漏れたり、メガネやカラフルすぎる毒のサンプルにツッコミが入る場面も。舞台編に向けて、チェックしておきたい人物の1人です。
2024年9月21日追記
舞台編の邪魚隊で大活躍していました(笑)!
歌とアクション、強烈なキャラクター…邪魚隊は見どころいっぱい!
映画から舞台へと展開してく邪魚隊の物語。歌って踊って殺陣アクションも満載の作品なので、ミュージカルファンも時代劇ファンも楽しむことができるでしょう。
さいごに、邪魚隊シリーズの更なる展開に向けて、知っておくともっと楽しめる情報をまとめます。
邪魚隊のイメージは座頭市とRRR!?スタイリッシュにお祭り騒ぎ
パンフレット内のインタビューにて、鱗蔵役の佐藤さんは「座頭市のような作品をやりたかった」、アクション監督は「RRRのようにしたかった」とそれぞれ明かしています。
映画本編では、鱗蔵の凄まじい殺陣アクション・民衆が歌い踊る華やかなシーンなど、「そう言われてみれば確かに!」と納得する場面が多数。
斬新な映像作品の一本として、シンプルに映画ファン目線で何も考えずに楽しむのもおすすめです。
応援上映に舞台挨拶、カラオケコラボに楽曲配信など多彩な展開に注目
邪魚隊の映画は、都心部での応援上映の実施や舞台挨拶などの華やかなイベントでも盛り上がりを見せました。
劇中歌の配信、カラオケ店JOYSOUNDとのコラボなど、日常生活でも歌って踊って楽しめるマルチな展開が続々。
特に邪魚隊のメインテーマである『What‘s Showing邪魚隊』は、登場人物の見せ場や「わっしょい わっしょい」という掛け声パートがあり、手拍子も打ちやすいライブ感溢れるお祭りソング。
「映画は見れなかったけど舞台には参戦する」という方は、メインテーマ曲だけでも予習しておくと良いかもしれません。(舞台編でこの曲が披露されない可能性もあるので悪しからず。)
2024年9月21日追記
舞台編の邪魚隊でも『What‘s Showing邪魚隊』が披露され、水野平馬のパートが追加されたバージョンに進化していました!
映画邪魚隊の物語の鍵は「歌」。ネタバレもあらすじも曲中にあります
ミュージカル時代劇というコンセプトの映画邪魚隊では、重要なシーンで歌唱が披露されます。
人物像を端的に説明してくれたり、ラスボスの正体をコミカルに解説してくれたりと、歌でリズミカルに描写する手法はミュージカルならではの魅力満点。
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一例として、メインテーマ曲で鱗蔵は『(釣竿の)糸を垂らす』、平馬は姉の“イト”を追って『運命の糸を手繰り寄せる』という趣旨のパートを歌います。
言葉遊びの面白さに加え、実際に平馬は鱗蔵が垂らした『糸』のおかげで窮地を脱し邪魚隊と出会い、運命を切り開いたという洒落感も注目ポイント。
映画邪魚隊のネタバレやあらすじを確認した後は、ぜひ舞台編に向けて、劇中歌に散りばめられた物語の鍵を改めて紐解いてみてはいかがでしょう。
<ここに注目!>
姉がお太鼓教の歌姫として祭り上げられていることを知った平馬、お太鼓教と鬼の秘密を探る邪魚隊は利害が一致し行動を共にします。
しかし物語は単なるサスペンス時代劇ではなく、悲劇が繰り返される中で互いの想いや過去が交錯していくという内面性の比重も多め。
仲間同士の衝突や宿敵との死闘を経て描かれる家族との絆、他者との絆、恐怖と向き合い脅威に立ち向かう強さが印象に残る一本です。